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「相続の放棄をしようと思うんです。」
という話をよく聞きます。
でも、よーく話を聞いてみると、
「相続で何も取得しないつもり」
という意味なんですね。
専門家からすると一瞬「?」となる話です。
ちなみにこの場合、専門家は「相続放棄」という言い方はしません。
専門家にとって「相続放棄」とは、
相続に関する財産も債務も一切放棄するために、
家庭裁判所に申し立てて行う手続きことをいいます。
実際にはそんな手続きをしなくても、
相続で財産や債務を取得しない方法があります。
それは、「自分は相続で何も取得しない」という内容の
遺産分割協議書に自署・押印をすればOKです。
言い方を変えると、
「自分以外の相続人が財産や債務を取得する」という内容です。
それで目的は達成されます。
相続の実務では、遺産を分けるにあたって、
ほぼ間違いなく遺産分割協議書を作成します。
そのときに「何も取得しない」という内容にすればいいのです。
わざわざ家庭裁判所に行く必要はありません。
では「相続放棄」はどんなときにされるかというと、
ほとんどの場合、借金がいっぱいあって引き継ぎたくない、
というときにするものです。
つまり、
「相続放棄」と、
「相続で何も取得しない」とは、
意味合いが違うんですね。
一般の方の場合、その使い分けを知らない方が多いんです。
専門家はその事情を踏まえ、相談を受ける必要がありますね。
一般の方も、その使い分けを知っていれば、
専門家が混乱しなくて済むようになります。
このような認識の違いがあることを、
頭の片隅においておくといいかもしれません。