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ちょっと難しめのお話。

お得情報ではありませんが、大事なお話です。

 

『「所得税の基礎控除」は憲法に定める「生存権」である。』

という話があります。

 

あらためて憲法の「生存権」とはどんなものかというと、

日本国憲法第25条第1項に書いてある国民の権利です。

「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」

 

なので、

所得税の基礎控除は、その権利(つまり「生存権」)を保障するものだ、

という考え方ですね。

違う言葉で言い換えると、

最低限ここまでは生活に必要だから、税金をかけないでおくべき金額、

それが基礎控除額なんだ、ということですね。

 

だから、

基礎控除額は生活を保障する金額であるべきだ、

という議論があるわけです。

 

しかし、

実は、令和2年にすでにこんな改正がされていました。

合計所得金額が2400万円を超えると基礎控除額が徐々に減り、

2500万円を超えると基礎控除額がゼロになるという改正です。

高所得者への狙い撃ちで、

基礎控除額がゼロになっている国民が、

すでにこの日本に少なからずいるわけです。

 

そこを問題だと考えた人が裁判を起こし、

先日、令和7年12月4日、東京地裁で判断が下されました。

 

どのような内容だったかというと以下のとおり。

 

===ここから===

原告が主張する最低生活費非課税の原則をどのように具体化し、

基礎控除も含めた総体としての人的控除の具体的内容をどのように定めるかは、

政策的判断を必要とするものであり立法府の幅広い裁量がある。

憲法25条1項が全ての納税者に基礎控除が認められることを具体的に保障しているとか、

改正前基礎控除が同項の具体化であって

立法府の上記裁量を制限してでも維持すべきものとまでいうべき根拠はなく、

まして、所得が一定額に達し、十分な担税力を有する一部の居住者に

基礎控除を認めないこととしている本件規定の当該部分が

直ちに同項に違反するものということもできない。

===ここまで===

 

私なりの言葉で言い換えると、

基礎控除額は国会議員の裁量で決めていいものですよ。

基礎控除がない人がいるからといって、

すぐ憲法違反だというわけじゃないですよ。

 

憲法とは「国と国民」の関係を決めるものです。

この判断は、基礎控除額に決定について、

国会議員(実質的に財務省?)に決定権を認める内容、

と私はとらえました。

 

う~ん。

 

う~ん。

 

まだ、地裁の判断ですね。

 

原告の方はどこまでこの裁判を続けるのでしょうか。

是非、最高裁までいってほしいなあ、と個人的には思います。