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遺言まわりの勉強をガシガシ進めています。

その中でちょっと思ったことを。

 

「もしも自分が死んだら?」という心配は、

誰しも持っておかないといけないですよね。

 

そのため、ほとんどの人は生命保険に入っていると思います。

自分が死んだ後の、配偶者や子どもの生活費・教育費を手当するためです。

 

では、遺言はどうか?

皆さん、遺言は作ってありますか?

遺言を書いた、という人はほとんどいないと思います。

 

なぜ書かないのか?

 

「まだまだ死なないし、書く必要ないよ」

という人が多いかと思います。

でも、生命保険は入るのに、なぜ遺言は書かないのでしょう?

 

ではここで、遺言を書いていないことを前提に、

もし私が突然、事故で死んだらどうなるか?

少し考えてみます。

 

相続人は、妻(年齢不詳)、長女(18)、長男(15)の3人。

長女はギリギリ成年ですが、長男は未成年です。

 

財産は自宅と預貯金。

住宅ローンは残っていますが、団信に入っているので、

ローンの支払は免除されます。

 

そうなると、自宅と預貯金を、

妻・長女・長男で遺産分割することになります。

 

遺産分割とはいえ、長女も長男もまだ若いです。

すべて妻が相続して、子ども達の面倒を見てほしい、

と私は思います。

妻も長女も長男も同じように考えて、

長女も長男も「全部お母さんでいいよ」と言うでしょう。

 

しかし、ここでちょっと面倒なことが。

長男は未成年なので、遺産分割の協議に参加できません。

未成年は自分の意思が未成熟、という理由で、

意思決定の場に参加できない法律になっています。

 

では、どうするか?

特別代理人という人をたてて、

代わりに遺産分割の協議に参加してもらうことになります。

 

そして、この特別代理人は「長男の権利を守る」

という使命を法律上持たされます。

長男は「いらない」といっても、

特別代理人は相続の権利を主張しなければならないのです。

 

ちなみに、妻は自分の権利と利益相反になるので、

特別代理人にはなれません。

利益相反のない人を特別代理人しないといけません。

 

つまり、妻・長女・長男の3人が同意していても、

特別代理人が入ることによって、

思い通りにいかなくなるのです。

 

そして、その特別代理人が主張しないといけない

相続割合は4分の1です。

長男が4分の1をもらう権利があるので、

特別代理人はその内容でなければハンコを押せないのです。

ハンコを全員が押さないと自宅や預金の名義変更もできません。

 

という具合になんやかんやと面倒なこと起きます。

ただでさえ、一家の大黒柱がいなくてバタバタなのに

こんな面倒な問題も抱えることになります。

 

では、「妻に全部相続させる」という遺言があったら?

 

長男が未成年であろうが、長男の権利があろうが、

遺言があれば名義変更はできることに法律上なっています。

遺言はそれだけの力があります。

 

名義変更ができれば、生活費や教育費を、

私の遺産からすぐに払うことができるようになります。

遺産分割協議のハンコをすっとばせるのです。

 

遺産分割同様、長男には「遺留分侵害」という問題は残ります。

権利の割合は8分の1です。

しかし、数年前の民法改正で「遺留分」は物権から債権になりました。

昔と違って解決しやすくなっています。

 

遺留分の問題は残りますが、解決はしやすくなっていますし、

名義変更はすぐにできて、当面の生活費をすぐに引き出せます。

遺言を遺すことのメリットは確実にあります。

 

であれば、

生命保険は入るのに、なぜ遺言は書かないのか?

 

書いておいた方がいいよなあ、と最近感じています。

 

公正証書遺言はいろいろ面倒ですが、

自筆証書遺言なら比較的簡単に作ることも可能です。

検討する価値はあるなあ、と感じています。

 

遺言を書くことは面倒なことかもしれませんが、

自分が死んだときに妻や子どもに面倒なことをさせず済みます。

 

かつ、「ありがとう」という言葉を遺すこともできたりします。

 

またいろいろ勉強を進めます。